【11th anniversary】


「じゃあ、明日は10時半に迎えに行きますね」
「おう」
「あ、そうだ。15日の取材、先方の都合で18日に変更になったんですよ。ちょっとハードになっちゃいますけど…よろしくお願いします」
「18日?時間は同じ?」
「はい」
「オッケーわかった。んじゃお疲れ!」
「お疲れ様でした!」
家の前までマネージャーに送ってもらい、明日の予定を確認して車を降りた。
いつもの何気ない会話。
けれど、ふと…気づいた。
「18日…そっか…もうそんな時期か…」


9月18日・19日…去年のその日、俺達は日本武道館にいた。
他でもない。10周年記念ライブのためだ。
去年の今頃は、とてもアツい日々を送っていた。
普段の仕事に加え、ライブグッズ用の撮影やインタビュー、10周年という事で雑誌の取材も多かったし、アルバム「TOK1O」も発売したから、それの宣伝や握手会もやった。
その合間にツアーの準備もして…かなりのハードスケジュールだった。
おまけに、太一はそれらとほぼ同時進行で「ひとり舞台」という大仕事に挑んでいたし、長瀬も松岡もドラマをやっていたから、5人揃う事はなかなか難しくて…。
正直、時間も余裕もあまりなかった。


でも…本当に楽しかった…。


会場中を走り回り、全身で皆の“想い”を感じ取っていたアイツ。
何年ぶりかの短パン、すっげー恥ずかしそうにしてたっけ。
松岡は、舞台のあと間髪いれずにドラマに入って、マジでやつれてたんだよな。
ちゃんと休めっつーのに、俺達のために徹夜でカレーを作ってきてくれて…。
すっげー美味かったな、あのカレー。
太一は、ひとり舞台もライブもどちらも手を抜かず、本当に頑張ってた。
あれは俺には真似できない。
シゲはそんな日々をとても幸せそうに過ごしていた。
5人で過ごせる事が本当に嬉しい…そんなオーラが全身から出ていた。


俺はあまり感傷に浸ったりせず、淡々とこなしていく方だけど、あの時だけは別だった。
鮮やかに脳裏に焼きついていて、今も昨日の事のように思い出せる。
会場の熱気・声援・一緒に頑張ってくれたスタッフ・メンバーの笑顔・そして…ファンの子からのプレゼント。
溢れる歌声に、舞い飛ぶ紙飛行機。
あんなバースデープレゼントをもらえるとは、思ってもみなかった。


「最高やん…こんなグループになったんやで!」
最後の最後に俺にそう耳打ちしてきたアナタ。
その目に光っていた涙が、忘れられない…。




…パチッ。
部屋の明かりをつけると、ソファで眠っていたらしいじゅのんが顔を上げた。
嬉しそうに尻尾を振りながら俺にまとわりついてくる。
「ただいま。遅くなってごめんな」
じゅのんを抱き上げ、ソファに座る。
頭を撫でてやりながら、鞄の中からある物を取り出した。
白い封筒…中には…写真。
この間、PVの撮影で5人でハワイへ行った。
その時に太一がデジカメで撮った写真を焼いてくれたんだ。
ファンの子には見せられないようなしょーもない写真ばっかで、本当に30過ぎが3人もいるグループか?と思ってしまう。
でも、そこには確かに1年前より少し成長した「TOKIO」がいた。


もうすぐ11周年目の記念日を迎える。そして12年目へ突入していく…。
どんな風になるかなんてわからないけど、俺達はこれからも突っ走っていく。
20年だろうと30年だろうとやってやるさ。
新しいTOKIOを…変わらないTOKIOを……魅せてやる。



―Fin―

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11周年記念…ということで書いてみました。懐かしい思い出と、新たな決意…って感じでしょうか。
去年の今頃はライブだったなぁ…という皆様が抱えているであろう気持ちを、山口くんに代弁してもらいました(笑)
なぜか思いついた時から山口くん目線だったんですよ。
「その目に光っていた涙が忘れられない」←これが書きたかっただけかも。。