あめふり
【おひさま】の原型というか…最初はこんなだったのです^^;
こっそりひっそりUP。
【あめふり】
「♪〜♪♪〜♪」
いつもの楽屋に、のんきな鼻歌が響いた。
その声に、一瞬、場の空気が止まる。
みんながその声の主の方を見ているんだろうな〜というのがわかる。
オレは眠いし面倒くさいから目を開けず、そのまま横になっていた。
「♪〜♪…え?どうしたんすか?」
一人きょとんとしている様子の長瀬の声。
「お前がいきなり歌い出すからだろ」
「すげー懐かしい歌だね。なんだっけタイトル…あめ…じゃなくて…」
「あめあめふれふれ、じゃなかったですか?」
「それ歌い出しやん。曲名は『あめふり』やろ」
「あ、そっか」
「っつーか、なんでそんなの歌ってんだよ?」
「なんか、どっかの店でかかってたんすよ。それでなんか耳についちゃって」
長瀬が歌っていたのは、童謡の『あめふり』だった。
長瀬らしいな。っつーか、シゲは何でもよく知ってんな。
「そういえば、前にやってた番組で、この歌に関する都市伝説ってあったな」
都市伝説や噂話を紹介する番組で、童謡に隠された秘密…っていうのもちょくちょくあって…と太一が簡単に説明する。。
ああ、あったなそういう番組。UFOとかなんとか…。
ああもうどうでもいいや。オレは眠いんだ…。
「確か…2番の歌詞を歌ったら、ずぶ濡れの男の子の霊が現れるとかってやつだ」
「え、うっそ、マジでっ?!オレ歌っちゃったかもっ!」
「お前そんなん信じるなよ。ってか2番の歌詞ってどんなのだっけ?」
「『あらあらあの子はずぶぬれだ やなぎのねかたで泣いている』っていうの」
「それ3番ちゃう?」
「え、そうなの?」
「あ〜そうだ!2番はかばんをかけましょとかいう歌詞だもん」
「そうそう」
「リーダーもも松岡もよく覚えてんね」
「じゃあ幽霊出ないんっすか??」
騒ぐ声が嫌でも耳に入ってくる。
っつーか、単なる噂だろ?幽霊なんて出るわけねーだろうが…。
そんな長瀬に呆れている雰囲気が伝わってくる。シゲはそれでもにこにこ笑ってるんだろうな…。
「あんな、『あめふり』って実は5番まであるんやけど、主人公の男の子はお母さんが迎えに来てくれてはしゃいでるんよ。で、途中で傘を持ってない男の子を見かけて、自分の傘を貸してあげんねん。僕は母さんの傘に入っていくから〜って。やからそんな寂しい歌やなくて、雨の日だからこそのふれあいを描いた優しい歌なんよ」
「そうだったんだ〜」
シゲの優しく諭すような声に、素直に感心する長瀬の声。
まるで幼稚園の子供と先生みたいだ。
思わず口元がほころぶ。すると今度は太一の声が聞こえた。
「でもさっきのリーダーの歌さ、『やなぎのねもと』じゃないの?『ねかた』?」
「え、『ねかた』でしょ?」
「『ねもと』じゃないんすか?」
「第一『ねかた』ってなに?」
ねかた…ねかた…なんだっけな…。
いやだから、それよりオレは眠いんだって!いつまでこの話題引っ張るんだ?
「正解は『ねかた』。根っこの方って書いて『根方』。意味は根元とおんなしやね」
「へぇ〜〜!」
「知らなかった!俺ずっと『ねかた』って何かと思ってた!」
「なんかすげぇスッキリした!」
あぁ、そっか、根っこの方ね…シゲは本当に物知りだねぇ…。
っつーか、ぎゃーぎゃーうるせぇなこいつら。俺が寝てるの完璧に忘れてるだろ?
「はいはい!じゃ〜もういっこ質問!」
松岡のはしゃいだような声。
こいつも幼稚園児か…。
「最後の5番でさ、『ぼくならいいんだかあさんの大きなじゃのめに入っていく』って言ったのは貸した子のほう?それとも差し出された子?」
「貸した子じゃないの?」
「オレもそう思う!」
「え、俺ずっと差し出された子だと思ってた!違うの?!」
「話の流れから言うたら貸した子ちゃうん?」
「でも両方とれない?」
「え〜絶対貸した子だって!」
「差し出された子だよ。その子のお母さんがいて…」
「…貸した子だろ」
4人が一斉にオレを見る。
延々と続く議論に耐えかねて、思わず体を起こして言っていた。
「山口くん起きてたの?」
「っていうか聞いてたの?」
そこに、スタッフが顔を出した。
「太一さん、山口さん、楽屋訪問お願いします!」
「「はーい!」」
「ほら、太一行くぞ」
「あ、ちょ、待ってっ!」
まだぽかんとしているメンバーを残して、楽屋を出る。
そしてスタジオへ向かう途中、太一が隣を歩くスタッフに聞かれていた。
「さっき随分と熱く議論してましたね。なに話してたんですか?」
「や、まぁ…ちょっと……」
適当に笑って誤魔化す太一。
俺はそんな太一の当惑っぷりを見て、笑いを噛み殺すのに必死だった。
そりゃ言えねぇよなぁ…『あめふり』についてだなんて…。
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「根方」は何だろうと思って、ネットの辞書で調べました(爆)「ぼくならいいんだ〜」云々は、あるトーク番組で俳優さんがそういう話をしてらして、差し出された子が言ったんだという考えで話してたんですよ。それで貸した子のほうじゃないの?と私の疑問を松岡さんに言って頂きました(笑)