【お土産】

「あ、そや。山口〜」
「うん?」
「これスタッフから預かってきてん。はい」


ある日のTOKIOの楽屋内。
シゲが差し出してきたのは、少し大きめの茶色い封筒。
受け取ると、中に少し固い紙らしきものが入っているのが分かった。


「なにこれ?」
はとバスの記念写真」
「あ〜アレね」



この間、俺とシゲはバラエティ番組のロケで、『東京はとバスツアーを自転車で回れるか?』いう企画をやった。
シゲは一般のお客さんと一緒にはとバスで東京の下町を観光。
俺は同じコースを自転車ですっ飛ばして回る…というものだった。
その時、浅草寺でツアー参加者全員で記念写真を撮ったんだけど、それが出来てきたのか。


封筒の中から薄いビニール袋に入った写真を取り出す。
袋から取り出し、指紋がつかないよう慎重に持って、覗き込んだ。
最後列の右端に、にっこりアイドルスマイルのシゲ。その肩に寄りかかり、手足を広げてわけわかんねぇポーズの俺。


「よう撮れてるやろ?」
「俺すげー顔してんな(笑)」
「ええやん。輝いてるよー」
「そうか〜?それにしてもアナタ…」
「うん?」
「おじちゃんおばちゃん達にすっごい馴染んでるよね。またこのマフラーが絶妙…」
「かっこええやんか」
「まぁ、バッチリ着こなせてるのが凄いけどね…」


「なになに?なに見てるの?」
「うおっ!」
「びっくりした〜」


いきなり肩にのしかかられて振り返ると、いつの間にか太一が俺たちの背後にまわっていた。


「なんの写真?」
「見せて見せて〜」
つられて松岡と長瀬まで寄って来る。
いや、もしかしたらずっと気にしていて、タイミングを計っていたのかもしれない。



「あ、俺これ見た!兄ぃの移動距離ハンパなかったよね」
「俺も見た。やっぱ山口くんすげぇなって思ったよ」
「でも楽しそうでしたよね〜」


驚いた。こいつらみんなあの放送見たのかよ。


「リーダーほんと巣鴨でも違和感なかったよね(笑)」
「っつーか、アンタちょっと本気で観光してたでしょ?」
「好きなんよ、下町。なんや温かぁてええやん」
「確かにいいとこだけどね」
「あ、デジカメの写真見る?」


シゲはごそごそとカバンを探り、自分のデジカメを取り出した。
あの時しっかりデジカメ持参して、いろいろ撮ってたからな。
俺は帰りの車の中でもう見せてもらったんだけどね。
大人気ねぇかな?と思いつつ、ちょっとした優越感…。




笑ったり突っ込んだりしながらシゲの写真を見る3人。
そんな3人を何をするともなしに見ていたら、松岡がぽつりと呟いた。
「そういえばさぁ、兄ぃ最後すげー嬉しそうだったよね」
「あ、リーダー見つけたとき?」
「そうそう。すげぇ笑顔になってさ」
「あれは…」
咄嗟に弁解しようとして、パッと顔が熱くなった事に気がついた。



最後の目的地である巣鴨の刺抜き地蔵。
商店街を突っ切って到着すると、そこにシゲはいなかった。
もう時間が来て帰りのバスに乗ってしまったのか…と脱力して、門のところに座り込んでいた時だった。
紙袋を抱えて他の観光客と共に歩いてくる、見慣れた笑顔を見つけた。
安堵して思わず笑みをこぼしたのを、しっかりカメラに撮られていた。しかもアップで。


「二人で煙浴びたり、観音様を洗ったり、すっげー楽しそうでしたよね!俺も行きたかったな〜」
「それはいいけど、自転車ハンパねぇぞ?大体自転車って言ったら長瀬じゃねーの?」
「え〜ぐっさんっすよ!マウンテン山口でしょ?」
動揺を隠すように長瀬に話を振ってみる。
すると、松岡がニヤッと笑ったのが目の端に映った。
「あれ、兄ぃちょっと顔赤くない?」
「な、なんでだよ、なってねーよ!」
「山口くん、あの時、結構弟モードだったよね〜」
「そうそう、リーダーと一緒でデレデレしちゃってさ〜」
「だから、ちげーって!なんでだよ!」



あーもうなんでタッグ組んでるんだよ、こいつら!



「ほな今度みんなで巣鴨行くか〜?」
「いや、そういう問題じゃ…」


当の本人はほんわか笑顔で的外れな事を言う…。
アナタ気づいてないの?
なんで松岡と太一が俺を攻撃してるのか…なんで長瀬が羨ましそうにしてるのか…。



「あ、そういえばリーダーお土産は?」
長瀬が期待を込めた声で聞く。
「あ〜…そんなに時間無くて……ごめんなぁ…」
シゲが本当に申し訳なさそうに言った。


「俺も濡れ煎餅食べたかったな〜」
「そういえば買ってたね。あれもう食べちゃったの?」
太一が長瀬の言葉を受けて尋ねる。
巣鴨商店街で、俺がひた走っている間にアナタがのんびり試食して買っていた濡れ煎餅。



一瞬、シゲと目が合った。
薄茶色の目に、イタズラっぽい光が宿る。





「そんなんとっくに食うてもうたわ」
「なーんだ。残念」
「ま〜いいけど」



俺は笑みが浮かんでくるのを抑えるのに必死だった。




あの日、帰りの車の中で、シゲが俺の前に煎餅を一袋差し出した。


『はい。お土産〜』
『え、くれるの?』
『濡れ煎餅、食ってみたら美味かってん。山口がんばったからご褒美♪』
『ご褒美って…』
『ホンマに美味いんやで?』
『はいはい。ありがと』




アナタの心遣いが…本当に嬉しかった…。





俺だけがお土産もらったなんて知ったら、また攻撃されるに決まってる。
だからこいつらには…絶対教えてやんねぇ。




fin
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昨日のDASHを見てからもう書きたくてたまらなくなって、突発的に書いてしまいました。
ちょっと甘々なお話ですが^^;
お煎餅、山口くんの分も買ってたに違いない…と思うのは私だけではない…よね?!